歴史から紐解く「ダイバーシティ」

「ダイバーシティ」という言葉をご存知でしょうか?

数年前、ダイバーシティに関するアンケート調査が実施されました。(調査期間:2017年2月1日~28日/調査対象:「エン転職」利用者/有効回答数:7,385人)


その中で、「自社(または、離職中の人は前職)でダイバーシティに取り組んでいると感じる」という質問に対して、「積極的に取り組んでいる」と答えた割合は19.0%でした。

多くの企業が導入しているとは言い難い結果ですが、私たちが働いていく上でとても重要となるキーワードの一つともいえます。

今回は、なぜ「ダイバーシティ」という考え方が生まれ、企業が取り組みを行っているのかということについて、その歴史的背景を紹介します。

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「ダイバーシティ」=「個性」

ダイバーシティ(Diversity)とは、直訳すると「多様性」となりますが、正式には「Diversity and Inclusion:多様性の受容」と表現されることが多いようです。

当たり前のことですが、人間は一人ひとり、外見と内面に大きな違いがありますよね。まず、外見的な違いは性別、年齢、人種、身体の障害といったものが挙げられます。そして、内面的な違いは、宗教、性格、価値観、嗜好等、挙げたらキリがありません。

また、外見的・内面的な違いだけでなく、「働き方」にも人それぞれの違いがあります。

人にはそれぞれ「個性」があり、それを尊重できる環境が今の時代にはとても重要視されているのです。

では、なぜ多様性を受け入れることが重要視されているのでしょうか?

まずは、多様性を受け入れるという文化が生まれた背景について説明していきます。

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ダイバーシティの歴史

ダイバーシティが推進され始めたのは、つい最近の話ではありません。

最初に取り組み始めたのはアメリカで、1960年代とおよそ50年前にさかのぼります。

ここで、年代別に歴史を振り返ってみます。

〇1960年代
アメリカでは公民権法が設立され、それまであった黒人の迫害といった人種差別の撤廃や、性別による雇用条件の格差など、あらゆる差別をなくし、雇用の均等化を行うことが義務付けられました。しかし、法ができたからといって、すぐに変化が起こるものでもありませんでした。

〇1970年代
根強い差別はすぐにはなくならず、ある大手の企業では、黒人女性に対する差別から裁判へと発展し多額の賠償金を支払うといったことも当時は起こっていました。このような問題が起きて以降、差別による訴訟を避けるために部分的にダイバーシティを認めるという、いわばリスクマネジメントを目的として広がりを見せたのが最初だったそうです。

〇1980年代
そんなリスクマネジメントから始まったダイバーシティですが、徐々に人それぞれの「個性」へと重点を置くようになっていくのです。グローバル化が発展していき、海外で売れるサービスや商品を提供していくためには、「多様な価値観」や「個性」を必要と感じた企業が多かったからだと言えます。

更に、アメリカの人口構成を予測した「Workforce2000」という報告書が発表されます。そこには、2000年までに米国の労働人口は女性や高齢者、様々な人種が増えるという結果が書かれていました。この報告書の結果も「個性」へ重点を置き始めた要因の一つとされています。

一方この頃、日本でも…


これまではダイバーシティへの取り組みを何もしてこなかった日本ですが、米国の流れを受け、1985年に「男女雇用機会均等法」が制定され、職場における男女の雇用の差を禁止し始めました。

〇1990年代
ダイバーシティの受容が進むことにより、事業の発展が多く見られたり、経営の成果を得ることができたりと、より一層注目が集まります。1970年代ではリスクマネジメントという倫理的な考えで行っていたダイバーシティを、企業成長のための経営的なダイバーシティへと変化を遂げることができたのです。

一方この頃、日本でも…


1999年に「男女共同参画社会基本法」が制定され、男女の人権を尊重することが義務付けられました。しかし、日本は男女の差別にのみ法の制定をしており、米国のような人種や宗教、年齢などの差別に関する注目は薄かったようです。

〇2000年代~現在
米国ではすでにダイバーシティが浸透しており、「個性」を活かし新しい価値をつくり出すというフェーズにまで到達しています。

一方この頃、日本でも…


少しずつですが、日本でもダイバーシティ・マネジメントを取り入れた経営が少しずつ広まりを見せ始めました。米国はグローバル化に向けた経営面でのダイバーシティを行っていましたが、日本は違いました。

続いて、日本がダイバーシティに取り組み始めた背景に追っていきます。

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日本でダイバーシティが注目される理由

「労働力人口の減少」が最大の理由だとされています。少子高齢化が著しく進み、労働力人口が減っていることで、企業は人材を確保することが困難になってきました。

そんな問題を解決すべく、多様な人材を受け入れ、それぞれのライフスタイルに合わせた環境作りを行うことで、離職率の軽減や新しい人材の確保にも繋がっていきます。

また、「個性」を活かし、パフォーマンスを最大限に発揮できる環境が整えば、採用や人材の定着だけではなく、新しいサービスの提供や、顧客のニーズを様々な角度からとらえることができるといった、企業優位性を作ることもできるのです。

冒頭でも述べましたが、現在はまだ19.0%しかダイバーシティに取り組んでいません。

しかしながら、「ダイバーシティは大事な考え方だ」と回答した人は、およそ95%にも上りました。この想いこそが日本の未来を変えていく大きな一歩となるのではないでしょうか。

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まとめ

人それぞれ生まれた場所も育った環境も出会った人も違う、だからこそ、みんな違ってみんな良いと思います。

いろいろな考え方、「個性」が集まるからこそ、新しいものが生まれたり、面白いアイデアがひらめきます。

まだまだ、日本では発展途上なダイバーシティを多くの人たちが受け入れることで、より働きやすい環境で働くことができるといった「個人」のメリット、より良い人材の確保やサービスの提供ができるといった「企業」のメリットがあります。


視野を広げ、様々な角度から考え、一人でも多くの人や企業が「個性」と向き合えば、自然と多様性を受け入れることができると思います。

調べれば調べるだけ奥が深いダイバーシティ。

今回は歴史に絞った内容にまとめてみました。

「働き方改革」には欠かせないダイバーシティ。

次回は「ダイバ-シティ経営」について紹介したいと思います。