今回は、キャリア理論の中の代表的な考え方の一つである「計画的偶発性理論/計画された偶発性理論(プランドハップンスタンスセオリー)」について紹介します。
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<目次>
•「計画された偶発性」理論の背景と基本的な考え方
•「計画された偶発性」理論を実践するための五箇条
- 自分の方向性を定め、アンテナは高く
•「出会い」と「出来事」を大切に
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スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授によって提唱されたこの理論は、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」とし、その偶然を計画的に設計して自分のキャリアを良いものにしていこう、というキャリアパスに関するポジティブな考え方です。
「計画された偶発性」理論の背景と基本的な考え方
20世紀末に発表されたこの理論が米国で注目を集めた背景には、
「自分のキャリアは自分自身で意図的に職歴を積み上げて形成するもの」
という従来型のキャリア論の限界がありました。
それまでは、「自分の興味、適性、能力、周囲の環境などを合理的に分析すれば、目指すべき最終ゴールや、そこへ至るステップアップの道筋までが明確になる」はずと考えられてきましたが、実際にはそうしたアプローチが必ずしも有効とは限らないことが分かってきていたのです。
むしろ変化の激しい時代において、あらかじめキャリアを計画したり、計画したキャリアに固執したりすることは非現実的であり、すべきでない、とクランボルツ教授は指摘します。
自分が何をしたいかの意思決定にこだわり、一つの仕事や職業を選びとることは、とりもなおさず、それ以外の可能性を捨ててしまうことに繋がるからです。
「計画された偶発性」理論を実践するための五箇条
「計画された偶発性理論」では、個人のキャリア形成をもっと幅広くとらえ、
「キャリアの8割が予期しない出来事や偶然の出会いによって決定される」と考えます。
「その予期しない出来事をただ待つだけでなく、自ら創り出せるように積極的に行動したり、周囲の出来事に神経を研ぎ澄ませたりして、偶然を意図的・計画的にステップアップの機会へと変えていくべきだ」というのが同理論の中心となる考え方です。
これを実践するために必要な行動指針として、クランボルツ教授は次の5つを掲げています。
- 好奇心:たえず新しい学習の機会を模索し続けること
- 持続性:失敗に屈せず、努力し続けること
- 楽観性:新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考えること
- 柔軟性:こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること
- 冒険心:結果が不確実でも、リスクを取って行動を起こすこと
自分の方向性を定め、アンテナは高く
こうして5つのスキルを並べると難しいイメージになりますが、新しいことを怖がらず、失敗してもめげないで、直ぐに行動する習慣を持っていればいいと思います。
そうした姿勢で常にアンテナを高く立てていれば、自分に有用な情報や人が向こうからやってくるのではないでしょうか。
ただ、漠然とでもいいので、「こういう仕事がしたい」「こういう感じになりたい」という自分の進みたい方向性を定めておくことが大切です。
方向性が定まっていないとアンテナの高さと感度が不安定で、大事な種を見つけにくいからです。
新しい人や、ものに出会う機会は少なくないはずです。
そうした時、異質なものに関心を持って、取り組んでください。
偶然のように見えて、実は偶然ではないかもしれません。
「出会い」と「出来事」を大切に
あえて「計画された偶発性理論」に関連付けるまでもないことですが、人との「縁」や「出会い」はキャリア開発において非常に重要な要素です。
もう一つ大事なのは「出来事」です。
つまり、成功体験や失敗体験から如何に謙虚に学ぶことができるか、ということです。
特に失敗の機会というのは、自己成長にとっての「計画された偶然」のようなものと言えるかもしれません。
過信しない程度に自信を持ち、常に学び続ける姿勢こそが自己成長の上で重要なことなのでしょう。
「振り返って見ると、あれは必然的な偶然だったな」という「出会い」や「出来事」がありませんか?
それらを大切にしてゆきましょう!
次回は、「キャリアプラン」について、その考え方を紹介します。

<参考文献>
その幸運は偶然ではないんです
(クランボルツ著・花田光世訳 ダイヤモンド社)
※以下抜粋
- 想定外の出来事を最大限に活用
- 選択肢は、いつもオープンに
- 目を覚ませ!夢が現実になる前に
- 結果が見えなくても、やってみる
- どんどん間違えよう
- 行動を起こして自分の運を創り出す
- まずは仕事について、それからスキルを学ぶ
- 内なる壁を克服する
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偶然を必然に。