「意図的に睡眠時間を減らす」とどうなるか?

なかなか寝つけず、夜中に覚醒してしまうという睡眠障害を乗り越えるために、ある冒険を試みました。

それが、意図的に睡眠時間を減らす方法です。

その具体的方法や効果のほどは如何に?

今回は、睡眠制限療法について紹介します。

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~ 科学的根拠に基づいた睡眠制限療法 ~

これは、不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)の一環です。

その基本は、なんとか寝ようと悪あがきするために費やす時間を削り取ってしまうことです。

~ 睡眠制限療法のやり方 ~


1.数週間の睡眠時間を記録

まずは、数週間ほど実際に寝た時間をきちんと記録することです。

何月何日は何時間、次の日は何時間半と、メモ帳やスマホなどに記入します。

<例>

2.守るべき起床時間を決める

次に、絶対に起きなければならない起床時間を決めます。

朝6時半など、仕事に間に合うギリギリの時間で結構です。

(私の場合は、毎朝5時起床が基本形。休日は、今のところ7時頃起床。)

それから、午前0時までは絶対に眠らないようにします。

(睡眠時間は、6時間を切っていることが望ましい。)

3.ベッドに入る時間を15分単位で早めていく

この時間にしっかり眠ることができれば、15分単位で寝る時間を早めます。

こうして最終的には、一晩の睡眠時間を7時間まで伸ばしていくのです。

もちろん、切望している睡眠時間を自ら奪ってしまうなど、誰もが嫌なことでしょう。

それでも多くの証拠が、この方法は睡眠導入剤と同等かそれ以上に効果があることを証明しています。

例えば、「CBT-Iの効果に関する論文」20本を調査した結果が報告されましたが、ほぼ薬物治療と同等の効果を発揮していることが判明しています。

それより以前の臨床試験でも、アンビエンやレストリルなどの一般的な睡眠導入剤よりも、不眠症対策として有効であるという結果だったそうです。

~ 大切なのは眠った時間より眠りの質 ~

CBT-Iは、ただ睡眠を制限するだけではありません。

不眠症患者の睡眠に関する考えと、行動を変えることに主眼が置かれているのです。

その大部分に、寝る1時間前に電気機器の電源を切ることや、毎日同じ時間に起床するといった、一般的な睡眠についてのアドバイスが含まれています。

一般的には、眠れた時間ばかり気を取られていることが多いものです。

これが、睡眠制限療法が効果的だという大量の証拠がありながらも、なかなか実践されない理由なのでしょう。

実際のところ、不眠症の人が悩まされているのは、短時間の睡眠ではありません。

ベッドに入って眠れないまま天井を見つめなければいけない・・・

その時間なのではないでしょうか?

しかしながら、自ら意図的に睡眠を制限することは、控えめに言っても辛いことです。

不眠症患者にとって、睡眠の誘惑に抗うことは、いかなる本能にも反することでしょう。

~ 睡眠制限療法で睡眠効率が上がる理由 ~

睡眠制限とCBT-Iが効果的である理由は、実は非常に単純な条件付けなのかもしれません。

眠れないと焦れば焦るほど、「なんとか眠ろうとする行為=不眠」と関連付けられるのです。

こうしたことは、何か重要なことを片付けるためにかかる時間は、その人が割くことのできる時間とほとんど変わらない傾向からも分かるかもしれません。

例えば、締め切りの迫ったプロジェクトが突然進み始めるといったことは、誰しも経験があることではないでしょうか?

ギリになると、不思議なことに、どうにか克服できる・・・

締め切りの法則は、どうやら睡眠にも当てはまるようです。

質の良い眠りを得るためには、それなりに自分をリサーチし、あえて修羅の道を歩むべく決意することも、時には必要なのかもしれません。